人が亡くなると、その人との時間もそこで終わってしまうと思っていた。
思い出すのは懐かしむため。亡くなった人を偲ぶため。
でも、葬送のフリーレンを見ていて、少し違うかもしれないと思った。
ヒンメルの存在は、フリーレンにとってとても大きい。
もう何年も前に亡くなっているのに、ずっと物語の中にいる。
アニメを見始めたとき、ヒンメルは「とある勇者パーティーのひとり」くらいの印象だった。
千年以上生きるエルフと、100年足らずで死んでしまう人間。
フリーレンもどこかそっけない。
でも回を追うごとに、フリーレンがヒンメルを、ヒンメルたちとの旅の時間を、ものすごくひきずっていることがわかってくる。
話が進むにつれて、ヒンメルは「過去の仲間」ではなく、フリーレンの「今」を形作っている存在になっていく。
「当時はわからなかった感情が、後からわかる」
ヒンメルの生き方が、何十年も経ってからフリーレンの中でじわじわ効いてきている感じがした。
でもそれは、特別なエルフだけの話じゃなくて、実はとても当たり前のことなんじゃないのかなと思う。
今はもういない人。
でも、かつて一緒に過ごした時間は、その人が死んだら「はい、終わり」ではなくて、私が生きて覚えている限り、ずっと私とともにあり続けているものなんじゃないかな。
ヒンメルは「もういない人」なのに、物語の中で一番フリーレンを動かしている存在。
うまく表現する言葉が見つけられないけれど、私は亡くなった父のことを想った。
えぐられるけど、それだけじゃなくて優しさもある。
静かにえぐって、あとはそっと包む。
「失ったこと」を見る物語なのに、「まだあるもの」に気づかせてくれる優しさ。
フリーレンが多くの人に好まれている理由が、僭越ながら少しわかった気がした。